行政書士の日本史〜明治国家と書類行政〜近代官僚制の成立と文書手続の拡大

行政書士の日本史

導入

行政書士の業務を考えるとき、「書類で手続きをする」という前提は当たり前のものとして受け取られがちです。
しかし、日本社会において、申請・届出・許可といった行為が広く書類によって行われるようになったのは、比較的近代になってからのことです。
明治期は、その前提自体が社会に定着していく過程にあたります。

そもそも明治国家とは何か

明治期の日本は、身分や慣習による統治から、法律と制度による統治へと大きく舵を切った時代でした。
明治政府は、全国を一律に管理するため、中央から地方まで共通の仕組みを整備していきます。
その中核にあったのが、官僚が職務として処理する文書と、国民が提出する書類でした。

なぜ書類行政が拡大したのか

近代国家では、「誰が」「どの条件で」「何を認められるか」を明確に示す必要があります。
口頭や慣行に依存した運用では、全国一律の処理はできません。
そこで、要件を文章で示し、申請内容を紙で確認し、記録として保存する仕組みが採用されました。
書類は、判断の基準であり、責任の所在を明確にする道具でもありました。

明治期の文書手続の特徴

この時代の文書手続には、いくつかの特徴があります。
第一に、様式が定められ、書き方が統一されていった点です。
第二に、提出・受理・決裁といった流れが制度として固定化された点です。
第三に、文書が保存され、後日の確認に耐えるものとして扱われるようになった点です。
これらは、現在の行政手続にも通じる基本構造です。

行政書士が関われる範囲

現代の行政書士が扱う多くの業務は、明治期に整えられた「書類で行政を動かす」という発想の延長線上にあります。
申請書の作成、添付書類の整理、制度上求められる形式の確認などは、この時代に確立した枠組みに基づいています。
行政書士は、制度が求める文書の形を、事実に即して整える役割を担います。

行政書士が関われない/注意が必要な範囲

一方で、判断そのものや、行政庁内部の意思決定に介入することはできません。
明治期以降、行政判断は官僚機構の内部行為として整理されてきました。
行政書士が扱えるのは、あくまで制度が予定する「提出される書類」の範囲に限られます。

現行制度・最近の改正で注意すべき点

現在の行政手続では、電子化や簡素化が進んでいます。
ただし、仕組みの根本には、明治期に形成された書類行政の考え方が残っています。
形式が変わっても、「要件を確認し、記録として残す」という構造自体は維持されています。

まとめ

明治期は、日本社会において書類行政が本格的に定着した時代でした。
この時代に成立した近代官僚制と文書手続の拡大は、現在の行政実務の前提となっています。
行政書士の業務を理解するためには、制度だけでなく、その成立過程を知ることも一つの手がかりになります。

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